【GO WAN わんこと紡ぐ物語 Vol.01】「犬は愛の塊。今あるこの時間を全力で愛おしんでほしい」漫画家・絵本作家ふくはらさなえさんが語る、これまでの歩みと『のほほんほん』誕生秘話

【GO WAN わんこと紡ぐ物語 Vol.01】「犬は愛の塊。今あるこの時間を全力で愛おしんでほしい」漫画家・絵本作家ふくはらさなえさんが語る、これまでの歩みと『のほほんほん』誕生秘話

琉球新報での4コマ漫画連載をはじめ、温かいタッチと心に染み入るストーリーで多くのファンを魅了する漫画家・イラストレーターのふくはらさなえさん。2026年5月には、長年親しまれてきた連載をまとめた待望の単行本『のほほんほん』(『とうじはマンガ家』より改題)を出版されました。

今回はGO WAN取材班がさなえさんのご自宅・アトリエをお邪魔し、愛犬ルルちゃんとの日常や、これまでの歩み、そして作品に込めた愛犬たちへの深い想いについてたっぷりとお話を伺いました!

激しい人見知りだった少女が「絵」という居場所を見つけるまで

激しい人見知りだった少女が「絵」という居場所を見つけるまで

—— さなえさんが絵を描き始めたきっかけは、いつ頃だったのでしょうか?

ふくはらさなえさん(以下、さなえ):
記憶を辿ると、保育園の頃にはもう紙とペンを持って身の回りにあるものをずっと描いていたみたいです。当時はものすごい人見知りで、初めて会う人と話すのが本当に苦手で…。何かしていないと落ち着かないから、絵を描くことが自分にとっての「逃げ場所」であり「唯一の居場所」だったんですよね。

—— 小さな頃から漫画やアニメもお好きだったのですか?

大好きでした!小学生の頃は『銀河鉄道999』のメーテルを見て「この美しさは何!?」って感動したり、『ときめきトゥナイト』を夢中で模写したりしていました。
うちは母子家庭で満足におもちゃを買ってもらえなかった頃は、自分で紙に絵を描いて折り曲げて立たせて、着せ替え人形や人形劇を自作して遊んでいました。

—— 中学生でコミケ(同人誌即売会)にも参加されていたと伺いました!

そうなんです!当時は首里の小さな公民館で開催されていた規模のイベントで、大好きだった『聖闘士星矢』や『TM NETWORK』の同人誌を描いて参加していました。授業中もノートは絵だらけで(笑)。テスト期間になると、美術部に集まった優秀な友だちが勉強を教えてくれて…本当に周りの人たちに助けられて生きてきました。

—— 高校でデザインを学ばれた後、一度絵から離れた時期があったそうですね。

「自分には才能がない」と思い込んで一度諦めたんです。短大の保育科に進んで保母さんを1年やったり、色々なバイトを点々としました。でもやっぱり馴染めなくて。

そんな中、30代前半の時にご縁があって漫画制作会社に入社することになりました。20代の先輩に一からパソコンの操作やデジタル仕上げを教えてもらい、必死で食らいつきましたね。当時は本当に忙しくて徹夜することもあって、思考が停止するほど過酷な日々でした(笑)。 でも、 ありがたかったのは愛犬モワと一緒に出勤できたこと。 気がつけば、 社員の皆さんが可愛がってくれて、 お散歩も連れて行ってくれたり…会社のセラピードッグのような存在だったのかもしれません。

挫折、 過酷な会社員時代、 そして絵本づくりの原点

挫折、過酷な「3徹」会社員時代、そしてヤギの食育絵本でのデビュー

—— その会社にいらっしゃった時に、初めての絵本を手がけられたのですね。

はい。 ヤギの食育絵本(お肉ができるまで)の作画を担当しました。 自分に描けるか不安もありましたが、 やってみたい!という想いが強かったのを覚えています。 実際に食肉センターへ取材へ行き、 そこで見た職人さんたちの手際の良さ、 命を扱う責任感と誇りに深く感動して。「命の繋がりと感謝を私なりの優しいタッチで伝えよう」と腹をくくって描き上げました。 そして、 いつか自分の絵本を描いてみたいな…と小さな夢が芽生えた時でもありました。

挫折、過酷な「3徹」会社員時代、そしてヤギの食育絵本でのデビュー

救急車から連載へ、そして愛犬モワが繋いでくれた奇跡『そばにいるよ』

さなえさんの人生や作品を語る上で欠かせないのが、これまで共に過ごしてきた愛犬・愛猫たちの存在です。

【ふくはら家の愛犬・愛猫たち】

  • モワ(初代愛犬・虹の橋へ):石垣島で保護された相棒。過酷な会社員時代も会社へ同伴出勤し、みんなに愛された守護神。
  • ルル(5歳):モワが旅立った後、SNSで出会った保護犬。ビビリで繊細だけど、ヘソ天で眠る姿が愛くるしい女の子。
  • みそ(推定9歳・虹の橋へ):ルルの寂しさを和らげるため迎えた食いしん坊な保護犬。2026年に旅立つ。
  • チーズ(愛猫・虹の橋へ):高校時代に迎えた猫。犬嫌いだったさなえさんが犬を克服するきっかけを作った(23歳で大往生)。

—— 2017年には琉球新報での4コマ漫画連載が始まりましたね。

実は2017年は、卵巣の病気(チョコレート嚢胞)で激痛で倒れ、救急車に運ばれて手術をした年だったんです。その直後に新聞社の「4コマ漫画コンテスト」で最優秀賞をいただき、連載が決定しました。まさに災い転じて福となす、怒涛の1年でした(笑)。

—— 代表作の絵本『そばにいるよ』はどのようにして生まれたのですか?

「自分の絵本を作りたい」と一歩を踏み出し、絵本出版塾に通っていた終盤、長年連れ添ったモワが亡くなってしまったんです。ショックでラストシーンが描けなくなった私に、先生が「出会いからお別れまでをそのまま素直に描いたらいい」と言ってくださり、悲しみと向き合いながら完成させました。

そうして1,000部自費出版したこの絵本を、なんと大手出版社「フレーベル館」の担当者様がネットで見つけてくださり、「犬が出てくるお話を描ける人を探していた」と直接お仕事のご連絡をいただいたんです!モワが空から繋いでくれた奇跡だと思っています。

—— 絵本や作品を通して、一番読者に伝えたいメッセージは何でしょうか?

犬の寿命は15年や16年。「こんなに短い時間しか一緒にいられないんだ」という事実をしっかりと受け止めること。受け入れた瞬間、目の前にいる愛犬との一瞬一瞬がどれだけ愛おしくありがたいかに気づいて、接し方が変わると思うんです。「犬は愛の塊である」ということ、その大切さをこれからも伝え続けていきたいです。

それに、いつも作品をつくるときに思っているのは、「たった1人でもいいから、この本と出会ったことで何かを得たり、気持ちが変わったりするきっかけになってほしい」ということ。もし誰か1人の心にでも届くなら、「私が生まれてきた意味はきっとそこにあるんだろうな」という強い思いで描いています。「どうか届いてくれ〜!」って、いつも祈るような気持ちで送り出しているんですよ(笑)。

救急車から連載へ、そして愛犬モワが繋いでくれた奇跡『そばにいるよ』

改題単行本『のほほんほん』と、日常をコマに変換する頭の中

—— 2026年6月には、連載をまとめた単行本が『のほほんほん』として装いも新たに発売されました!

はい!『とうじはマンガ家』から改題し、みーたん(みそちゃん)の出会いからお別れまでのエピソードなども込めて、より作品に寄り添う一冊として生まれ変わりました。

—— 4コマ漫画のネタやアイデアは、普段どのように生まれるのですか?

基本的には日常の何気ない会話や散歩中の人間観察です。「あ、これオチになるな!」とピンと閃いた瞬間に、頭の中で勝手に1コマ目から4コマ目までの構成がぐるぐる回り出します(笑)。

改題単行本『のほほんほん』と、日常をコマに変換する頭の中

例えばパン屋さんに並んでいて「喉が乾いた、向かいの自販機に行きたいけど、列を離れたら最後尾に並び直しかな…」と本気で葛藤している自分を、少し上から「俯瞰(ふかん)」して見て「あ、これ漫画になるな」って考えているんです(笑)。

「自分だけの物語を作る楽しさ」を届ける絵本教室と、ゆくゆく叶えたい夢

—— さなえさんは図書館などで「絵本作り講座」の講師もされているんですよね。実際の教室はどのように進めているのですか?

絵本作家3人のチームで講師を担当しています。基本的には2時間ほどの講座で、紙に見開き4ページ分の絵本を描くところまでを行います。

初心者や子どもたちでも形にできるよう、流れをしっかり組み立てています。

  1. 物語の起承転結を学ぶ:『大きなかぶ』などを例に出して、「どこでどんな音がしたかな?」「この時主人公はどんな気持ちだった?」と質問しながら、ストーリーの膨らませ方をアドバイスします。
  2. キャラクター決め:登場人物の気持ちや個性を考えます。
  3. 導き(テンプレート)の活用:ストーリー作りに迷ってしまう方には、「思い出」や「好きな食べ物」などの質問事項を用意して、それに答えていくと自然と文章(物語)が組み立てられるような工夫もしています。

1人だとどうしても受講者全員に手が回りきらないので、3人で手分けして巡回し、手が止まっている子に声をかけてアドバイスしています。受講した子がその後実際に自分で絵本を作って新聞に載ったという嬉しい報告もありました!

—— 素晴らしい取り組みですね!今後、飼い主さんや愛犬向けにもこういった講座をやってみたいお気持ちはありますか?

はい、ゆくゆくはぜひやってみたいですね!
「絵を描くのは難しい」という大人の方でも、愛犬の写真を使ったり、今はAIで画像を作ったりすることもできる時代です。ネット印刷のフォトブック作成サービスを使って、「ストーリー作成〜写真・イラスト配置〜スマホでの入稿」までを数回に分けて一緒に伴走するようなワークショップができたら面白いなと考えています。

ペットロスの悲しみを浄化するグリーフケアとしてはもちろん、「出会った時の感動や愛おしさ」を改めて一冊の本として形にすることで、愛犬との絆を再確認できるような時間をいつか作れたら嬉しいです!

「自分だけの物語を作る楽しさ」を届ける絵本教室と、ゆくゆく叶えたい夢

沖縄での愛犬ライフと、これからの新しい挑戦

沖縄でルルちゃんと過ごすお気に入りの過ごし方はありますか?

—— 沖縄でルルちゃんと過ごすお気に入りの過ごし方はありますか?

沖縄は車を少し走らせればすぐに豊かな自然があるのが最高ですよね。ルルはテントや海に入るのが少し苦手なので、砂浜を散歩したり、テラス席のあるカフェに行ったり。平安座島にある一棟貸しの宿で、近くのお肉屋さんで美味しいお肉を買ってBBQをするのが我が家のお気に入りです!

今はルルのビビリや興奮を和らげてあげたくて、夫と一緒に「テリントンタッチ(身体や神経に優しくアプローチする手法)」を調べたりして、ルルの世界をもっと広げてあげたいなと思っています。

—— これからの活動や、やってみたいことを教えてください。

現在は、お花と似顔絵を組み合わせた「似顔絵ガーデンフレーム(ドライフラワー専門店カゴノイトさんコラボ)」の制作なども行っています。
絵を描くことだけでなく、自分の思いを形にする「モノづくりの楽しさ」や「心が浄化される体験」を、これからも作品やワークショップを通してたくさんの人に届けていきたいです!

最後に、「GO WAN」の読者である沖縄の飼い主の皆さんへ向けてメッセージをお願いいたします。

私は、 すべてのワンちゃんが幸せに暮らせる世界を願っています。
最近は、 ドッググッズやフードが充実し、 愛犬と一緒に楽しめる場所も増えて、 とても素敵なことだと思っています。
でも、 その一方で、 人間の都合によって幸せになれない命があることも、 忘れてはいけないと思っています。
沖縄のすべてのワンちゃんが安心して暮らせる未来を願いながら、「命と向き合うこと」の大切さを考えてもらえたら嬉しいです。

取材を終えて(GO WAN編集部より)

波乱万丈な歩みを持ちながらも、終始弾けるような笑顔と温かいお人柄で取材に応じてくださったふくはらさなえさん。愛犬ルルちゃんを見つめる優しい眼差しがとても印象的でした。
新刊『のほほんほん』や絵本『そばにいるよ』をめくれば、目の前にいる愛犬がもっと愛おしく、抱きしめたくなるはずです。ぜひチェックしてみてくださいね!

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